第9回例会




<プログラム>
パッヘルベル:コラール変奏曲 心より私はあこがれる
演奏:斉藤純子

パッヘルベル:トッカータホ短調
J.S.バッハ:小プレリュードとフーガ 変ロ長調BWV560
演奏:川村素子

J.S.バッハ:前奏曲 ハ長調 プレルーディウムBWV567
演奏:深井亜希

「我が国のオルガン黎明期」
お話:岩崎正法

J.S.バッハ:オルガン小曲集より 古い年は過ぎ去りBWV614
                われら悩みの極みにありてBWV641
演奏:本間真弥

J.S.バッハ:小プレリュードとフーガ ト短調BWV558
ツィポリ:エレヴァツィオーネ
ツィポリ:オッフェルトリウム
モーツァルト:フーガ ト短調
演奏:石川裕美

ブラームス:11のコラール前奏曲op.122 おお神よ、いつくしみ深い神よ
J.S.バッハ:ファンタジア ハ長調BWV570
ツィポリ:聖体拝礼のときに演奏される曲
演奏:宇田蕗子

オルガンの話しと質問コーナー:林豊彦

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第10回例会



オルガン、チェンバロ、クラヴィコードの社会史
-18世紀ドイツにおける都市と宮廷-

講師 松本 彰(新潟大学人文学部教授)


バロック時代までのオルガンの音楽を考える場合、チェンバロとの関わりが大事な意味を持つことは、一月の月岡先生の講座でもふれられたとおりです。実は、当時、チェンバロとともに、もう一つ、重要な鍵盤楽器がありました。クラヴィコードです。弦を打って音を出すため、強弱をつけることもできますが、発音原理がピアノと異なるので、フォルテ、フォルテシモを出すことはできません。いや、実際、クラヴィコードは聴くと、まずその音の小ささにびっくりします。ほんとうに、繊細な楽器で、せいぜい20、30人ぐらいが耳をそばだててやっと聴くことのできるぐらいの音しかでないのです。しかし、この楽器、機構がかんたんなため、安価で、持ち運び小型のものもあり、鍵盤楽器の練習用には最適で、オルガニストにも、広く用いられていました。なにしろ、当時のオルガンは、誰かに「ふいご」で風を送ってもらわなければ、音が出ないため、練習のためには別の鍵盤楽器を用いるしかなかったのです。オルガンの練習用に、足鍵盤のついたクラヴィコードもありました。
古楽器による演奏が盛んに行われるようになってきて、チェンバロの演奏に接する機会は増えてきましたが、クラヴィコードによる演奏を聴く機会は、なかなかありませんし、どのような楽器なのか、知る機会も少ないと思います。今回は、クラヴィコードの話を中心に、ピアノが無い時代、オルガン、チェンバロ、クラヴィコードという三種類の鍵盤楽器が、どのような場でどのような機会に用いられ、当時の社会にとってどのような意味をもっていたのか、考えてみたいと思います。

18世紀ドイツにおける都市と宮廷-クラヴィコードの社会史のために

クラヴィコードは、18世紀、とくに1730年から1780年ごろまでの50年間ほどの間、ドイツで、とりわけ好まれた楽器であった。バロック音楽から古典派へ、チェンバロからピアノへの過渡期であるこの時代を、「クラヴィコードの時代」と呼ぶことも可能かもしれない、しかし、ではなぜドイツで、だったのだろうか?
そのことを考える場合、大事なことが二つある。一つは、このころのドイツは、各目的には、「ドイツ国民の神聖ローマ帝国」という名の帝国だったが、実際には、プロイセン・オーストリア・バイエルン・ザクセンなどの君主国、そしてハンブルクなどの自由都市、それぞれが独立した国家であり、それらが全体として、地域としてのドイツを構成していた。ドイツは分裂していたのである。
もう一つ、当時のドイツの身分制は、貴族、市民、農民の三者から構成されており、ドイツでは市民も一つの身分だったことである。市民は、貴族と農民のあいだの「中間層」として、それなりのプライドを持っていた。一方、当時、ドイツの君主たち、つまり貴族はドイツ文化よりは、外国の文化に夢中だった。サン・スーシ宮殿でフルートを吹いていたプロイセンのフリードリヒ大王の日常語はフランス語だった。一番好まれていた音楽は、イタリア・オペラであり、多くの宮廷でイタリアの音楽家が活躍していた。
その中で、ある世代以降の市民の中に、ドイツ文化への自覚、分裂したドイツを統一しようという機運が急激に高まってくる。それは、政治というよりは、文化的、精神的な運動だったが、貴族のフランス趣味に反発するという意味では、市民としての自覚のあらわれであった。ドイツ運動と呼ばれるその運動は、貧しい現実野中で、理想を高く掲げ、カントやゲーテに象徴される、ドイツ精神の黄金時代を築く。
ドイツ運動の中心は、地方だった。ドイツは、分裂していたが、それによって、文化の中心はたくさんあった。フランスでは早くから国家が統一され、強い王権のもとでバロック文化が栄えたが、すべての文化は首都パリに集中していた。それに対し、ドイツは、ベルリンはプロイセンの首都であって、ドイツの首都ではなかった。
カントとケーニヒスベルク、ゲーテとヴァイマル、そしてJ.S.バッハとライプツィヒという取り合わせを考えてみれば、当時のドイツにおける、地方都市の活躍がよくわかる。ヴァイグル「啓蒙の都市周遊」(岩波書店、1997年)は、この時代、ドイツの地方都市から、新しい文化がどのように生まれてきたのか、生き生きと描いている。彼によれば、18世紀前半には、宮廷都市でも、自由都市でもないライプツィヒが、ドイツの首都になろうとしていたのである。J.S.バッハは、そのライプツィヒで、トーマス教会のカントルであるとともに、市の音楽監督だった。ドイツの中部・北部のプロテスタント地域では、教会が都市行政に深く関わっていた。
18世紀ドイツにおけるクラヴィコードの流行の背景にあったのは、そのようなドイツ都市の文化、市民の文化であった。J.S.バッハとその息子や弟子たち、特にハレのバッハと呼ばれた長男W.F.バッハ、ベルリン、ハンブルクのバッハと呼ばれた次男C.P.E.バッハ、そして最後の弟子で最北の植民都市リガ(現在、ラトヴィアの首都)に住んだミューテル、彼らの活躍の舞台となったのは、中部・北部の都市であった。それらの都市は、南のカソリックの大都市ヴィーンとは精神風土の異なった「もう一つのドイツ」だった。18世紀前半までのドイツでは、音楽でも「ロココ」や「ギャラント」などの様式、つまりフランス趣味が圧倒的に優勢だった。しかし、後半には「疾風怒涛」、「多感様式」と呼ばれる、新しい文学や思想の流れが、大きな意味を持つようになる。北の都市から生まれたその新しい潮流は、ドイツ運動かもたらしたものだった。外面的な華やかさより、内面的な表現が、洗練された様式美より、若々しい、おふれるような「感性の発露」が、新しい芸術の理念となった。極度に音が小さく、繊細な楽器、クラヴィコードは、そのような、個人の内面性、感性、を表現するために最適の楽器として絶賛された。フランスの、貴族の楽器チェンバロにたいし、クラヴィコードこそ、ドイツの市民の楽器だったからである。そのようにして、クラヴィコードは、歴史の舞台から退場する直前、ドイツでその絶頂期を迎え、この楽器のための名曲が書かれたのである。

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第11回例会




アレッサンド・マルテェロ/ヨハン・ゼバスティアン・バッハ編曲
アダージョ

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
パルティータ 第6番ホ短調

カール・フリードリヒ・クリスティアン・ファンシュ
アントワーヌ

ヨーゼフ・ハイドン
クラヴィーア・ソナタ ト短調

ヴィルヘルム.フリーデマン.バッハ
ファンタジーホ短調

カール・フィルップ・エマニエル・バッハ
ヴゥルテンベルク・ソナタ 第1番イ短調

クラヴィコード演奏:綿谷優子

「クラヴィコードへの途」
講師:ジャン・ツゥルネイ
通訳:安達正浩

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第12回例会



「音律と調律」お話と演奏:八百板正己
「オルガン調律の実験」お話:久保井洋允

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第13回例会



歌とパイプオルガンのコンサート
ソプラノ:村上雅英
オルガン:小林英之

C.メルロ:トッカータ(オルガン独奏)
A. グランディ:モテット「やさしきイエス」
J.B.ボエセ:「主よ王をお救いください」
J.ジル:「主に向かって知らせなさい」
F.メンデルスゾーン:アンダンテ(オルガン独奏)
G.フォーレ:「サンヴェ・レジーナ」
E.ショーソン:「あなたはまったく美しい、マリア様」
W.A.モーツァルト:「すみれ」
         「夕べの思い」
         「ファンタジー ヘ長調」(オルガン独奏)
         「踊れ喜べ幸いなる魂よ」

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第14回例会




バード:ヴォランタリー
ギボンズ:ファンタジア
J.P.スウェーリンク:半音階的ファンタジア
演奏:八百板正己

パーセル:恋の病よりわれは逃れん
パーセル:夕べの祈り
ヘンデル:樹木の蔭で
ヘンデル:われを泣かせたまえ
演奏:ソプラノ・西門優子/オルガン・山田淳子

J.S.バッハ:コラール「主よ、人の望みの喜びを」
演奏:トロンボーン・中谷昌広/オルガン・松本彰

ボエルマン:「ゴシック風組曲」より 聖母の祈り
J.S.バッハ:前奏曲とフーガ イ長調BWV536
演奏:市川純子

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第15回例会




演奏 山田淳子
J.S. バッハ オルガン小曲集より
「主イエス・キリストよ,我汝に呼ばわる」BMW 639

演奏 本間真弥
J.S. バッハ オルガン小曲集より
「かくも喜びに満てるこの日」BMW 605
クラヴィーア練習曲集 第3部より
「いと尊きイエスよ,われらはここに集いて」BMW 731

お話し 林 豊彦
「−甦るキルゲン・オルガンの響き−」

演奏 渡辺まゆみ
D. ツィポリ
オフェルトリオ
L. ボエルマン 
ゴシック組曲より
■「聖母の祈り」
■「序奏/コラール」




 −甦るキルゲン・オルガンの響き−

新潟大学工学部福祉人間工学科教授 林 豊彦



新潟パイプオルガン元年 1998年9月,新潟市内のある教会に待望のパイプオルガンが設置された.重低音の16フィートパイプを備えた本格的なオルガンは, 新潟県ではこのオルガンと,ほぼ同じ時期に完成した市民芸術文化会館の大オルガンしかない.その意味で1998年は新潟オルガン元年というべき記念すべき年となった.

アパラチア・オルガン オルガンを設計・製作したのは,アメリカ合衆国メリーランド州のアパラチア・オルガン会社(Appalachia Organ Co.).会社といっても社員はわたしの友人,ジョージ・プリトニク(George Plitnik)氏とその家族しかいない.その彼も本業は州立大学の物理学教授.副業として,オルガンの修理・メインテナンスや中古部品を使った製作を手がけている.
 わたしとパトス音楽村店長の久保井さんといっしょに新潟オルガンプロジェクトを始めたのが1993年.第1号オルガンは翌年8月に完成した.今は巻町のワイナリー「カーブドッチ」のレストランで活躍している.ほぼ同じ仕様の2台目は1997年7月に完成し,村上市の小田部宅に納められた.今回設置された新潟市内の教会のオルガンは3台目になる.

 このオルガンは前の2台とは違い,前身の楽器がわかっている.オリジナルはキルゲン・オルガン会社の製品.1928年にアメリカ南部の教会に納められた.1984年まで使われていたが,同年5月,教会の火災で一部が損傷したため,プリトニク氏が買い取り,保管していた.それにオーボエ1ランクを追加し,電気系を新しくしたものがこのオルガンである.

キルゲン・オルガン この会社は1866年,ジョン・ジョージ・キルゲン(John George Kilgen)と息子チャールズによって設立された(Geo. Kilgen & Son, Inc., St. Louis, MO, USA).1939年,チャールズの息子達の争いによってキルゲン・オルガン会社(Kilgen Organ Company)とキルゲン協会(Kilgen Associates)に分裂.前者は1960年まで存続した.それまでの約100年間に製造したオルガンの数,なんと約4000台.もちろん台数では全米一である.その技術は現在,元従業員のネイゲル(Max Nagel)氏の会社,セントルイス・パイプオルガン会社(St. Louis Pipe Organ Company)に引き継がれているという.
 寺尾教会のオルガンが作られた1920年代は,アメリカオルガンの全盛期.映画館や劇場に数多くのパイプオルガンが設置された.無声映画や劇の効果音楽用である.だから,太鼓,木琴,チャイム,サイレンなど,教会オルガンにはないユニークなパイプ(?)がたくさんある.キルゲン・オルガンも多くの劇場用モデルを製作していた.

甦ったオルガンの響き 地球の裏側で14年ぶりに生まれかわったキルゲン・オルガン.その響きは70年の時を経て,柔らかくそしてやさしい.自己主張とは無縁だが,存在感は豊かだ.聖堂にふさわしい音色である.彼女の第2の人生,わたしたちの手で実り豊かなものにしてあげたいと思う.


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第16回例会




●楠美恩三郎:オルガン曲集より「終曲」

●山田耕筰:前奏曲

●D.ブクステフーデ:コラール前奏曲
「来たれ、聖霊、主なる神」BUX WV200

●J.S.バッハの作品より
オルゲルビュッヒラインより
「われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ」BWV639

ノイマイスター・コラール集より
「主よ、われらを汝の御言のうちに保ち」BWV1103

27のコラール前奏曲より
「いと尊きイエスよ、われらはここに集いて」BWV731

トッカータ BWV565

●H.シュレーダー:間奏曲

●M.レーガー:序奏とパッサカリア

演奏:岩崎正法

-----休憩----


●.L.C.ダカン:異国のノエル

●D.ツィポリ:ソナタ
ベルソ ヘ長調 ..。.「
エレバツィオーネ ヘ長調
オフェルトリオ

●J.ブラームス:11のコラール前奏曲OP.122
「一輪のバラが咲いて」

●.J.S.バッハ:オルガン小曲集
「おお人よ、汝の大いなる罪を悲しめ」BWV622

●J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582

演奏:渡辺まゆみ


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第17回例会




●ジョスカン・デ・プレ:栄あれ、女王様

●クレランボー:今日キリストは生まれもう

●J.S.バッハ:カンタータ147番より「ひとの望みの喜びよ」

●G.F.ヘンデル:オラトリオ<メサイア>より「喜べ、シオンの娘達よ」

●フランスの讃美歌

----休憩----


●グランディ:優しきイエス

●ショーソン:あなたはまったく美しい、マリア様

●ヴェルディ:アヴェマリア

●モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」

ソプラノ:村上雅英 オルガン:小林英之


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第18回例会



クリスマスコンサート
●J.S.バッハ:主よ人の望みの喜びよ
●J.ブラームス:11のコラール前奏曲OP.122「一輪のバラが咲いて」
オルガン::市川純子

●J.S.バッハ:かくも喜びに満てるこの日
       :いと尊きイエスよわれらはここに集いて
オルガン:本間真弥

●讃美歌:もろびとこぞりて
    :まきびとひつじを
    :あらののはてに
●シューベルト:アヴェ・マリア(ラテン語版)
ソプラノ:西門優子 オルガン:山田淳子

●L.C.ダカン:異国のノエル
●J.S.バッハパッサカリアハ短調
オルガン:渡辺まゆみ

----休憩----


●J.クラーク:トランペット・ヴォランタリー
●G.ヘンデル:組曲よりオーヴァチュア
       :ラルゴ
●F.シューベルト:アヴェ・マリア
●J.S.バッハ:目覚めよと呼ぶ声が聞こえ
●讃美歌:ああ、ベツレヘムよ
●J.S.バッハ:プレリュードNo.22 BWV867
●讃美歌:神の御子は

トランペット:藤井裕子 オルガン:渡辺まゆみ
  

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