新潟カトリック教会聖堂




この聖堂のオルガンはドイツのAnton Feith社製の楽器で、昭和4年(1929年)に設置され、現存する日本の最も古いパイプオルガンの一つである。大正末期には日本にはすでに多くのオルガンがあったが、関東大震災でそのほとんど失われてしまった(1)。大正から昭和初期に導入されたオルガンで現存するものは、立教大学礼拝堂(大正5年)、南葵音楽堂(大正9年)、立教女学院聖マーガレット礼拝堂(昭和5年)の楽器など、もうわずかしか残っていないという(1)。
平成2年(1990年)、新潟カトリック教会のオルガンは解体修復され、本来の響きが完全に甦った。このオルガンは、空気作動式アクション(2)という特殊なキー・アクションが用いられており、鍵盤とパイプの弁を空気チューブで連結し、弁の開閉には風箱の中の小さな「ふいご」を使う。その「ふいご」や伝達部に、経年変化により空気漏れが起こると、音の立ち上がりと停止が遅れてしまうのである。修復後の今でも、鍵盤を押してからゼロコンマ何秒かしてから音が出てくる。
手鍵盤1段と足鍵盤からなり、ストップは5つ、足鍵盤は独立したパイプをもっていない。パイプには金属製の開管2種類(Principal, Salicional)、木製の閉管1種類(Gedeckt)がある。閉管とは上端が閉じられているパイプをいう。響きの特徴は、明るく力強いプリンシパルのコーラス、とても70歳とは思えない若々しさである。それに比べてGedecktの音色は柔らかいが、やや個性に欠けるように思う。パイプの状態は見たところ良好で、大切に使われてきたことがよく分かる。全種類のパイプを使ったテュティの響きは強烈で、聖堂の中を音でいっぱいに満たす。
参考文献
1)赤井励:オルガンの文化史、pp.151-214、青弓社、1995。
2)平島達司:オルガンの歴史とその原理、pp.85-87、松蔭女子学院大学学術研究会、1980。


●製   作Anton Feith社(ドイツ)
●設   置昭和4年(1929年)
●鍵   盤手鍵盤1段(C-f3),足鍵盤(C-d')
●アクション空気作動式
●ス ト ッ プ Geig-Principal 8', Salicional 8', Gedeckt 8',
Fugara 4', Rausch-Quinte 2 2/3'
●カ プ ラManual to Pedal, Sub. Oct., Super Oct., Tutti