―オルガンとチェンバロの響き― |
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第1部
〜オルガンの調べ〜 G.フレスコバルディ/《音楽の花束》より 聖体奉挙のトッカータ,聖体拝領後のカンツォーナ オルガン:山際規子 J.パッヘルベル/コラールパルティータ「心より我こがれ望む」 オルガン:笠原恒則 J.S.バッハ/オルガン小曲集より「古き年は過ぎ去り」BWV614 8つのプレリュードとフーガ 第8番 変ロ長調 BWV560 オルガン:木下朋枝 F.メンデルスゾーン/前奏曲とフーガ第3番 ニ短調 op.37 オルガン:市川純子 |
第2部
〜クープランとバッハ〜 F.クープラン 《教区のミサ》から オッフェルトワール オルガン:海津 淳 クラヴサン曲集 第1巻(第2オルドゥル)より アルマンド〈勤勉〉,第1クーラント,第2クーラント,サラバンド〈貞淑な女〉,ガヴォット チェンバロ:八百板正己 J.S.バッハ フランス組曲 第5番(BWV816)より アルマンド,クーラント,サラバンド,ガヴォット,ジーグ チェンバロ:八百板正己 21のコラール前奏曲より 「われらの主キリスト,ヨルダンの川に来たれり」BWV684 「いと高きところには神にのみ栄光あれ」BWV676 オルガン:渡辺まゆみ |
G.フレスコバルディ(G. Frescobaldi, 1583-1643) 《音楽の花束》(1635)より 聖体奉挙のトッカータ,聖体拝領後のカンツォーナ フレスコバルディはサン・ピエトロ寺院オルガニストにして17世紀前半の最大オルガニスト.トッカータは非常に即興的かつラプソディ的で自由なディヴィジョンによる演奏が要求される.その演奏法については,1614年出版のトッカータ集でフレスコバルディ自身が細かな指示を記している.カンツォーナは「四分音符+八分音符2つ+付点四分音符+八分音符」のリズムを持つテーマが次々に現われ,対位法のおもしろさが十分に味わえる.途中3/2に拍子が変化し,全体に軽快活発な性格を持つ.(山際規子) J.パッヘルベル(J. Pachebel, 1653-1706) コラールパルティータ「心より我こがれ望む」 パッヘルベルといえば弦楽のカノンが有名だが,本領はオルガン曲にある.ブクステフーデと並びドイツ中期バロックのオルガン音楽を代表する存在.本日取り上げる讃美歌に基づく変奏曲は,曲集《音楽による死の観想》(1683)に収められており,主題の歌詞は死後の平安を望む内容となっている.同時代の文献によれば,彼がオルガニストをしていたエルフルトで同年9月にコレラが流行し,この曲はその死者を悼むために作曲されたという(彼の夫人と幼い息子も犠牲者).その旋律は「おお頭は血と傷にまみれ」という歌詞でも親しまれ,約半世紀後に大バッハも《マタイ受難曲》の中軸のコラールとして用いた.(笠原恒則) J.S.バッハ(J.S. Bach, 1685-1750) 8つの小プレリュードとフーガ 第8番 変ロ長調 BWV560 この8つの小品は,ライプツィヒ時代の弟子,J.L.クレープスの作品ではないかと思われる.前奏曲はペダルソロの付いたトッカータ風の曲想で始まり,主部で明朗ではぎれよい曲想に変わる.フーガは8つの小品全体を締めくくるにふさわしい華やかな曲となっている.(渡辺まゆみ) オルガン小曲集より「古き年は過ぎ去り」BWV614 このオルガン・コラール集は,バッハが宮廷オルガニスト兼宮廷楽師をしていたヴァイマル時代に作られ,教会暦の順序に従って45曲作曲された.この曲は16曲目の年末用にあたり,悲しみと憂うつの表現が支配的である.装飾されたコラール旋律がこの世の無常に対する物悲しさを表現し,伴奏声部の半音階的進行がその表現を強めている.(渡辺まゆみ) F.メンデルスゾーン(F. Mendelssohn, 1809-1847) 前奏曲とフーガ 第3番 ニ短調 op.37 メンデルスゾーンは,ピアノ曲,オペラ,ヴァイオリン協奏曲など様々な曲種を作曲しているが,オルガン曲も数少ないが作曲している.彼は優れたヴァイオリニストであり,またオルガニストでもあった.バッハ復活の立て役者としても有名.「前奏曲とフーガ」op.37(1837)は3曲から成る.その第3番は前奏曲がフーガ風の部分を持つトッカータで,フーガには大バッハのフーガ変ロ短調の影響が見られる.(市川純子) F.クープラン(F. Couperin, 1668-1733) 《教区のミサ》より オッフェルトワール クラヴサンの詩人クープランは,宗教音楽においても珠玉の数々を残した.〈ルソン・ド・テネブル〉をはじめとする声楽曲,そしてオルガンのためのミサ曲.彼はパリのサン・ジェルベ教会,後にはルイ14世の王室オルガニストに就任し,1690年に2つのミサ曲からなるオルガン曲集出版した.なかでも奉献唱のための「オッフェルトワール」は規模が大きく,グラン・ジューによる堂々たる序曲からペダル声部を伴う対位法的な中間部を経て,生き生きとした舞曲ジーグのリズムをもつ終曲に至る晴れやかな作品である.(海津 淳) F.クープラン(F. Couperin, 1668-1733) クラヴサン曲集 第一巻(第2オルドゥル)より アルマンド〈勤勉〉,第1クーラント,第2クーラント,サラバンド〈貞淑な女〉,ガヴォット 全4巻からなるクープランのクラヴサン曲集には,想像力をかき立てられる標題音楽が多数収められています.1713年出版された第一巻の初期作品中には,まだ前時代のリュート音楽の影響が色濃く残る純粋な舞曲がいくつか見られます.オルドゥルとは,クラヴサン曲を数曲ずつまとめる時に使った名称です.ドイツ起源の舞曲であるアルマンドの副題が「勤勉」とは,ある特定の人物を描写しているのか,それともクープラン(あるいはフランス人)らしい皮肉か?などとあれこれ想像するのも楽しいものです.(水澤詩子) J.S.バッハ(J.S. Bach, 1685-1750) フランス組曲 第5番 ト長調(BWV816)より アルマンド,クーラント,サラバンド,ガヴォット,ジーグ 「フランス組曲」のニックネームで呼ばれる6つの組曲から成る曲集は,バッハが若き妻アンナ・マグダレーナのために書き上げた作品で,そのためか華々しい演奏効果よりは親しみやすい温かさを持つ.中でも第5番は特に親しまれている名曲.各楽章は当時宮廷などで踊られた舞曲である.形式を重んじるドイツでは,バッハより半世紀以上も前,組曲の誕生とほぼ同時期に舞曲の種類と配列(アルマンド,クーラント,サラバンド,ジーグ)が厳格に定められた.バッハのこの作品も伝統に従っているが,当時の趣味を反映して伝統的な配列中にガヴォットなどの最新流行の舞曲を数曲挿入している(本日はガヴォット以外の挿入曲は割愛).(八百板正己) J.S.バッハ(J.S. Bach, 1685-1750) 21のコラール前奏曲より 「われらの主キリスト,ヨルダンの川に来たれり」BWV684 「いと高きところには神にのみ栄光あれ」BWV676 このコラール前奏曲集は,定旋律に「キリエ」と「グロリア」以下,ルターの「教理問答集」の中心箇条(十戒,信経,主の祈り,洗礼,悔い改め,聖餐)に関わるものが選ばれている.そのため「オルガンのためのルター派ミサ」ないし「ドイツ・オルガン・ミサ」とも呼ばれる.1曲目はルターの洗礼コラールに基づく曲.手鍵盤の一声部が絶え間ない16分音符で川の流れを描写し,定旋律はペダルに現れる.2曲目はドイツ語グロリアの第2編曲.2つの手鍵盤とペダルで奏される協奏曲風トリオ楽曲.明るい曲調で,神への賛美に満ちあふれている.(渡辺まゆみ) |